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レイジングループ 感想

ADV レイジングループ

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人狼ゲーム、オカルト、ループから構成されている、主人公がとある閉塞的な村にたどり着いたことから始まる長い物語。

 

以下ネタバレが含まれるので未プレイの方はご注意ください。プレイした上で見てほしい。

 

 ※基本は暴露モードはプレイしていない状態で書いています。が、追記は全て終えた上で書いているのでネタバレ注意です。


 

[ストーリー]

 3つ目のルートまではリアル人狼ゲーム、それ以降は人狼ゲームへ至る背景・解決の話が中心となっています。最終的に神秘の解体というか、神の話になるのでしょうか。民俗学や心理学、あと神話、その辺がわかってると更に楽しめるのだろうな。

 本編の謎は人工的なものと超自然のものの2つから構成されていて、なかなかプレイヤーが主人公が言い出すより先に推理しきれませんでした。割とポロポロと気付けるようなきっかけはちらばめてくれてはいるのでわかる人はわかるのかも。(追記:祠の場所はパッケージ版やってたりしないと厳しくないですか?)

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 ©2015-2017 KEMCO ©2015-2017 dwango

 

 1周目の人狼スチルの視覚効果で結構超常的な力が強めの話なのか?という疑惑が強まってしまい…落ち着いて読み返すと主人公はずっと合理的に考えているのが分かって思考停止しないからこそ、この話の主人公たり得たのだなと思いました。

 

 

[システム]

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 ©2015-2017 KEMCO ©2015-2017 dwango


 ノベルゲームらしくフラグ(ここでは鍵)と分岐があります。素晴らしいのはわかりやすいチャートと、タイガー道場…わかりやすいヒントタイムがある点です。しっかり鍵の番号と場面指定をしてくれるのでストレスフリーで話に集中できるのが最高でした。あとからチャートを見直してもどこがどこの鍵になっているのかが一瞥できるのもとても良いと思います。

 次にボイスについて。今回はスマホ版でやったのでパートボイスだったのですが、丁度良い量でした。全部にボイスついてると読むのが辛くなってくる人種なので助かる。

 

[キャラクター]

主人公

 こんな主人公初めて見ました。いかれてる。

リアル人狼×ループもの、となると何度も同じメンバー間での疑心暗鬼になるので普通の精神だと狂ってしまうでしょう。実際ヒロインの千枝実ちゃんは狂ってしまいますし。そこを主人公はほぼ狂わずにやり切ってくれるので、シュタゲ的な焦燥感を出すパートがない。つまり立ち止まるパートがないので、そこもストレスフリーでした。(人狼陣営の時の苦悩する姿も良い塩梅でした。主人公の精神性を理解するのにちょうど良いし)まともすぎるとうだうだパートが入ってしまうようなな舞台をストレスフリーに、かっこよく乗り切ってくれるとなると、こういった性格の主人公になるのだなぁと感心しました。なので「いかれてる」は褒め言葉です。

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 ©2015-2017 KEMCO ©2015-2017 dwango

 特に主人公が名前偽るところはやられた!と爆笑してしまいました。主人公は飄々と登場人物たちに嘘をつくので、同時にプレイヤーも嘘をつかれることになる。もしかして医学系だとか理系だと院生だとかも嘘なのか!?…まあ最終的にみんな救おうという姿、そして生かしておくとリスクのある狼じじいの死を許認できる性格を考えると、最後にめー子に教えていたように「いい人で、ちょっと悪い人」なんだと思います。(追記:エンディング見た直後は思ってたんですが、今は素直に善人と言い難く…考えれば考えるほどわからなくなってきた。休水村の善人を基準にしたからそっち寄りに見えたのかも?)
 悪についての考え、ルールは自分で作る、好奇心旺盛(恐怖と快楽の区別がついていない)な点が最高でした。痛みや死への恐怖を持ったまま、知るという快感を追い求める精神性は異常としか言えない。あと四肢をもぐという所、私自身もなんでみんな引いてるんだ?と一瞬なったのですが、思えばプレイヤーと同じゲーム感覚でリアル人狼やってる主人公がおかしいんだわ。当事者なのにプレイヤーと同じ視点に立っている異常性。

 

芹沢千枝実

 主人公殺し=主人公への甘えになるほど狂ってしまったヒロイン。序盤の主人公との掛け合いが良く、購入の決め手の1つでした。ループの悲惨さは主人公ではなくこちらが担当してくれる。

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 ©2015-2017 KEMCO ©2015-2017 dwango

 しっかり自分のルートでヒロインさを出しつつ、ループの果てに狂った面もお出ししてくれるのが最高すぎる。主人公の「邪魔だな」で傷ついて泣いてしまうのも可愛かった。こういうめんどくさい所や突拍子もないところが主人公好きなんだろうな…彼女自身のセリフで印象に残ったのが主人公に対して怖い、怖いけど好きと言ってたところ。主人公の未知への恐怖と快楽に似てるなと。破れ鍋に綴じ蓋とはこのことか。恋人であれ、なんであれ、うまく主人公とやっていって欲し…ほんとに主人公でいいの?悪い男だよ…でもそこも好きなんだろうな

 

回末李花子

 

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 ©2015-2017 KEMCO ©2015-2017 dwango

 ループの鍵とは気づけましたが、まさかラスボス系ヒロインだとは。あざとい程お淑やかな面、どろどろとした世界を呪う面、牙を抜かれた後の面と様々な顔を見せてくれるこちらも魅力的なヒロインでした。こちらは暴露モードで見るとまた色々とわかりそうで楽しみです。

 

巻島春

 大きな心の傷からかみさまを蘇らせてしまったヒロイン。私的には一番好きなキャラクターです。主人公から「悪」を教えてもらって成長する美しさが最高でした。結局彼女の中のかみさまって超常的な存在でいいんでしょうか。それとも主人公のいう「神さま」、「正しさ」とは違うものでいいんですかね。主人公曰く、ただの偶然らしいので主人公の中ではループと異能以外は超常現象はないという解釈でいいのかな。(追記:エクストラや完全読本がだいぶわかりやすかった。ただふんわり理解でも面白かったなとも思った。)

 

他の面々も魅力的なキャラばかりでした。多いし、今の状態では長くは語れないので省略します。ただ、主人公が最終的に一言ずつ言ってったのが全てな気がします。めー子はだいぶ謎なのですが、別の作品をすればわかるのかもしれません。

 

[総括]

  全体的に欲しいものを高水準でお出しされて、更に期待以上のものを出してくれる良いシナリオでした。お値段も本編のみだと1,100円とお手軽、大ボリュームな作品でした。あとは暴露モードや公式ホームページの資料などを楽しんでこようと思います。

 

 

追記

 完全読本も購入しました。ざっと読みましたが、疑問点は解説してくれる気配があって素晴らしい。前作やってると理解しやすい概念が出てきたようなのでいつか手を出すかもしれません。小説も最初から最後まで主人公の「こ、こいつ〜〜〜〜」感があって良かった。宴の組み合わせも新鮮だったので読めて良かったです。余裕があればエクストラとか本の方も手を出したい所存。レイジングループの世界観まだまだ浴びたくてしかない。

 

追記2

 暴露モードも終了し、最後のヒントコーナーも覗き終わりました。つまりゲーム本編は全て終わってしまいました。感想としては、暴露モードも含めてしっかり本編なんだなと感じました。キャラたちの思惑、主人公が見ていないところで起きている事が見れたので、キャラや物語に親しみを持つことができてよかった。例えば李花子ちゃんの恋する姿や人狼をやっている泰義くんの思惑は暴露モードがなければ知ることもなかったでしょう(泰義くんの助けて欲しかったという最後の独白最高)。

 また実質2週目なので全体を把握した状態で物語を見直せるのもよかった。特に春ちゃんルートの悪の概念、神話ルートは一度で飲み込めないところがあったので2回目でストンと納得することができました。改めてですが、春ちゃんと「悪」のやり取りをするところ最ッ高ですね。地獄のどん底で正しさに抗う悪という概念を習得して成長する少女の美しさ。この血まみれの地獄と美しさのコントラストが最高。

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 ©2015-2017 KEMCO ©2015-2017 dwango

そのルートの最後が首を括るというバッドエンドであることも最高だし、嘘でも房石に好きだと言わせたと喜ぶ姿も大好きなんだ。房石の方は体がボロボロだからこそ苦しげに嘘を吐き出す様が最高でした。ボロボロじゃないとああならないと思うので。あと、かみさまに忌々しそうな顔で「かみさま、可愛いですよ」と言うのもイニシアティブ取りたい感じ、支配されたくない感情が出ていて良かった。この暗黒ルートは特に房石の房石らしさ、人間性が出ているなと思います。暗黒ルートからしか取れない栄養素がある。

 そして最終的に房石と春ちゃんの関係が恋仲ではなく相棒だとか戦友といった別の関係性に落ち着くところが良かった。春ちゃんがこのレイジングループという物語全体のたった一人のヒロインだったら恋仲という結末あったかもしれないけど、彼女にはずっと気にかけてくれていたモッチーという人もいるし、房石という異常者の隣はしっくりこないんだよなぁ。背中を預けあった仲が一番落ち着くなと。彼女には地に足つけて生きてほしい。同時に房石という人間の隣は彼の斜め上をいける千枝美ちゃんがしっくりくる。それが恋人であれ、敵であれ。
 勢いだけでだいぶ書いてしまいましたが、あとは本を購入しない限り、この記事も追記することもないでしょう。大変楽しませてもらいました。感謝。

 

追記3

 本編クリアから時間が空きましたが、エクストラ全て読破しました。結論から言うと、事件後も彼らの時間は進むのだなと実感できるので、登場人物が好きな方は買った方が良いと思います。以下、ほんのりネタバレを匂わせつつ感想。

 ネタバレになるので詳しくは書けないのですが、李花子さんに関しては特に救われた感じがありました。二人の関係性もだいぶ好きです。馬宮さんの話はもともと題材についても好きなので最高にテンションが上がった。人狼といい、探索者といい、リアルに描写されていると気の毒というか、自分は参加したくない・なりたくないとなるなとしみじみ思いました。馬宮さんの今後に幸あれ。旅館の話ではやっと「かがみ」の概念が理解できてすっきりしました。そして祭司と神様という関係性が明示されたのがよかった。そういうの好きなので。ひつじさんの話はD.M.L.C.読者に対するファンサービスが多分に含まれていましたね。最後繋がる瞬間が最高でした。ヒグマハンターは好きとしか感想が出てきませんでした。好きですね。

 コメディからシリアス、オカルトと筆者の方の筆が乗ってるのを感じられてとても贅沢な話ばかりでした。改めて好きだなと思ったので、しばらく時間をあけたら今度は書籍を買ってしまう気がします。

 

追記4

 お財布と相談しつつなので4巻までなんですけど、書籍版購入しました。いやー凄かった。ループものをどうやって小説版に落とし込むのか謎だったんですが、お見事でした……そうやって表現するのか……と驚いたし、それが邪魔になってないのがすごいなと思いました。ゲーム版で飛ばされ気味に書かれていた所が補完されていたり、村の不気味さが強調されていたりと小説版に最適化しただけでなく更に完成度が上がってる感じでした。主人公である房石の考えも補強されているのでゲーム版よりも何だがより人間味があるように感じました。そして彼の異常性についてもわかりやすくなってるので答え合わせのような気持ちで読む部分もあったり。ゲーム版をプレイしてない人も、し終わった人も別の楽しみ方ができるので是非購入してほしい。

 そして触れざるを得ないのですが、書評も今まで過去に触れたことのある作品の作者ばかりでびっくりしました。ビビるほど豪華。まだまだ3巻も楽しめるので少しずつ購入していこうと思います。楽しみ!