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MIU404 感想

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 この方の脚本は何度も言いたいことを繰り返して一貫して描写して伝えようとしてくれるから好きだなと改めて思いました。あとドラマの名前を劇中でしっかりお出ししてくるの大好きです。以下ネタバレ有りの感想となります。

 

[演出・脚本とか]

 扱っているテーマについてはドラマ中で全て綺麗に分かりやすく説明してくれたのもあり、語るべきことはないなという所感。下手に何か言って頭の中にある映像とかストーリーとか伝えたいテーマについての考えを歪めたくない気持ちがあるので、本筋には触れずに感想を出力していこうと思います。というか正義について短期間で考えすぎて頭痛い(※前回記事参照)。一言触れるなら主張は綺麗事ではないのだという説得力があってよかったです。

 前回のドラマの後いくつかドラマを見ましたが、改めてMIU404の作成陣は技術力がある方達なんだなと思いました。カメラの動かし方だとか絵の作り方、展開の仕方がうまい。例えば3話の水に派手に落ちるシーンや赤い自転車で追いかける際に上着がはためく姿は絵になるし、虚偽通報のリレーのシーンはただ追いかけるのではなく「どん」と言ってから開始するので本当にゲームみたいで見応えがありました。脚本と演出・演技がきちんと噛み合っていてドラマという媒体を最大限に活かしてる感じがする。

 「もし」の描き方もうまいんだ。麦ちゃんと成川が警察で接触した際404の二人が気づいていたらという「もし」はスローモーションで描写されていたし、最終話のラリった時の最悪の「もし」のバタフライエフェクトの描写は鮮やかすぎて最高でした。一瞬ご都合主義なのかとも思いましたが、悪夢だからこそコロナで潰れるなんて予想ができないオリンピックの開催の有無で表現してくるとは思いもしませんでした。演出が上手い。6話で志麻が「もし」を想像した映像を視聴者に見せてくるのも、志麻の告白があるまで彼を信じられなくなる効果があり、最後の最後まで緊張感があってよかったなと思いました。また彼が想像する「もし」を言葉だけじゃなく映像で叩きつけてきたのが説得力が増していいなと思いました。

 さらにハムスターいなくなった檻を見た時、毒物とハムスターを結びつけることで「この女の人は犯人だ」と思ってしまいました。そう思わせた上で「人は見たいものを見るのだ」という展開を出してくることで、視聴者の体験とストーリーの主張をリンクさせてくるという演出がすごかった。興奮して文章かけてるかわからないな。語彙力がなくなってしまう。

 演技の面でも4話の何か言いたげに防犯カメラを見る青池さんの表情、志麻さんの銃を頭に突きつけて挑発する表情、それを睨むように観察する伊吹の表情はとても印象に残っています。特に前者の19時まで逃げればいいと言った青池さんの表情と声色は、彼女の覚悟や人生が伝わってくるようでゾクッときてしまいました。俳優さんたちってすごい。

 ギミックというか展開についても、鍵となったSNSやnowtubeの使い方がしっくりきてしまうのもすごいなと思います。ストレスが溜まった時SNSに短い文を連投する人はよくいるし、よくわからないままタグを拡散する人もいる。陰謀論は現在散々問題になっている。ご都合主義な感じがない、もしくはうまく臭さを消せているのがすごいなと思います。6話の志麻の救いとなる横断幕を掲げていたのも、強引だなと思ったのですが「妊娠と引っ越しが重なったタイミングだから」という理由づけで納得させられてしまいました。すごいよなぁ。

 

[好きな回とか]

 好きな回は演出に感動し、また九重と成川のスイッチが描写された3話、青池さんの4話、リフレインの6話、派手な戦闘と401の中が深まったのがわかる7話なのですが、8話がだいぶ衝撃的でした。奥さんを2回車で引いたり、生々しい凶器を映したり画的にも衝撃的でしたが、逮捕の際、結婚指輪を映された瞬間頭抱えてしまいました。あそこに居る刑事全員に刺さっているんだと伝えてくる、さりげないけどパンチの強い映像。さらにその後「何があっても殺してはいけなかった」「全警官と伊吹のために」と言う志麻のダメ押しの言葉。「刑事だった自分を捨てても俺は許さない」と言う言葉がこの後二人にとって響いてくるのもあり本当に印象的な回でした。

 9話の九重と陣馬さんの飲み会のシーンも良かったです。陣馬さんが九重に「俺たちとは違うからこそできることがある」って言えるのが良いし、陣馬さんが声をかけれたのはちゃんと弱さを出せる関係性を築いてきたからこそでした。404の二人は言わずもがな、401の二人の関係の進展の描写もとてもよかった。

 あと九重は若い人がドラマに馴染みやすくするための視点としても動いてたなという印象を受けました。共感させる役とも言えるかもしれない。知らない単語の説明させる役だとか、勤務外だから飲み会を断るとかの言動だと「自己責任じゃないですか」という序盤のセリフとか。少なくとも私はかなり共感してしまいました、が詳しく書くと最早自己紹介になってしまうからこの辺で筆を置きます。陰謀論とか扱われている問題も他人事じゃないから言及の仕方に困るんだよな…。

 

[総括]

 主要メンバー全員丁寧に描かれている、派手な画がある、伏線をしっかり回収する、テーマが一貫している、そして物語を綺麗に畳んだ最高のドラマでした。警察側のミスで話を進めるのではなく有能さを出しつつ相手が上手でもって物語を進めていくテクニックだとか、引っ掛かるところがひとつもないのってすごい。社会で戦う女性を華麗に描き切ったのも令和のドラマだなという感じで良かったです。あとは前作の登場人物が自然に出てくるというファンサービスもあって嬉しかったです。中堂さんがまた怒鳴ってるようで笑ってしまいました。元気そうで何より。

 私はこれから感電を聞いて余韻に浸ってこようと思います。ドラマを見ない状態でも好きな曲だったんですが、見た後だとドラマのシーンを思い出せる殊更に良い曲ですね。どれくらいドラマの内容について聞いて作ったんだろうか。