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それでも、あなたは回すのか 感想

ソシャゲの仕事物小説。SNSで絶賛されていたので興味はあったのですが、就活シーンから始まると聞いていたので初めはなかなか手が伸びませんでした(就活なんて辛い物見たくなかった)。が、実際に読み始めると手が止まることなく、気づいたら読み終わっていました。就活シーンから始まったのもわかる終わり方でよかったです。今なら校正前の文章を編集者さんのnoteで読むことができます。手を伸ばしかねている人は是非。
以下ネタバレありの感想になります。

 

あらすじ
主人公は新卒の友利晴朝くん。就活って自分の価値を探して、それが合うかどうかを会社とすり合わせる行為(多分)だと思うのですが、それができてなかった友利くん、通称ハトくんはうまく就職できずに焦っているところを、なぜかソシャゲの会社が拾ってくれました。同期の青塚さんとは対照的に自分の価値も分からず、プロ意識もない彼。彼を「推し枠」として採用したハナサキさんは「自分の価値を証明しろ」と言います。普通なら会社に入る前に出来ていることをやれ、と。そんなハトくんが仕事を通して少し変わるお話。
 
キャラクターと展開について
この話に対する感想を出力しようとするとどうしても就活に関する話をしたくなりますが、嫌なのでそこは避けます。嫌なので。
話に出てくるキャラクターはどの人もわかりやすく個性づけされていて、誰が話しているのかが一見でわかりやすくなっています。そして一見すると社会人としてどうなの、と思ってしまうような誇張されたキャラ付けになっています。仕事ものというリアルと重ね合わせてしまいがちなものなので、そこで引っかかる人がいるかもしれません、がこれは小説なので、これでいいんだと思います。展開も同様のことが言えると思います。
 
全体
タイトルから、採用する際に人をNやSSR等格付けする話なのかなと思っていたのですが、全然違いました。あえていうならぼんやりとしたN(ノーマルレア)である主人公が覚醒する話なのかなとは思いますが。
篠森さんのような、過去に絶賛され長年ずっと求められている人、というのは誰しも心当たりがあるんじゃないでしょうか。自分もそうです。その人の名前があるからプレイする、ずっと待っている──結構辛いものがあります。そういったオタク、ファンの心を刺激するところ、就職という誰しもが通ること、ソシャゲへの不満など、現代人が共感できる要素がうまく組み込まれた小説だなと思いました。
自分は主人公にだいぶ共感しながら読んだので、最後一歩踏み出せたところはとても救われました。悔しさを手に入れた、向上心を手に入れたということは一見カッコ悪く感じますが、彼のような人間にとってはとても大きなことだと思います。自分も頑張ろう、そう思える良い作品でした。読んでよかった。
ハナサキさんが何を思って、何があって作品中のような動きをしたのかは次回作があれば語られるのでしょうか。篠森さんについてもまだ掘り下げられるところがありそう。次回作があるならその辺が楽しみです。