感想置き場

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六番目の小夜子 感想

舞台はよくある田舎の進学校。ただ普通の学校と違うのは「サヨコ」という儀式めいた伝統の役割が受け継がれていること。そんな学校の、六番目のサヨコの年に、ミステリアスな才色兼備の転校生がやってくることで話が始まる。
 

 

どうしよう、感想を書こうと思ってたんですが、何かを言うことが野暮なんじゃないかって思うくらいに満足してしまいました。
高校生という多感な時期の少年少女の話、学校という閉鎖空間の空気がたくさん詰まっていて、思わず叫びたくなるくらい好きな本でした。ここまで好きな本に出会ったのは初めてかもしれない。1992年出版作品なので普通に高校生がタバコ吸ったり酒飲んでもさほど咎められていなかったり、「かしらん」が使われていたりと時代を感じる部分はあるのですが、満ちている空気や思春期の少年少女の様子は現代と同じで、本書の中にあるように学校という箱、コマは同様に回り続けているんだなと感じられました。
 
古いカフェや写真部という溜まり場は勿論のこと、四季の描写と高校生の時にしかないあの瑞々しい雰囲気で満たされていて最高の気持ちになりました。高校生を摂取している。楽しい。
転校生である沙世子の美しさがまたいいんですね、あの主人公と言わんばかりのカッコイイ感じ、周りの評価。そんな彼女も転校生って特別なんかじゃない、田舎に転校すればいじめられるし、親に振り回されてるだけなのに何かを企んでると思うの?転校生という属性に期待しないでって言うのが、とても良い。フィクションのような属性を貼られた彼女から見える人間味あふれる雰囲気がたまらない。美香子を友達の面して操ろうとする強かさや秋への感情も最高でした。
作中で沙世子は高校では転校生、街にとってよそ者、サヨコという儀式では第三者として扱われています。容姿の美しさや性格、属性からか買いかぶられがちですが、それはこれまで転校を繰り返してきた中で養った処世術もあるのだろうなと、成績が張り出された時の振る舞いから思いました。かき回そうとやってきた彼女も結局は流れのひとつに過ぎなかったというのがとても好きです。黒川という観測者であり強い意志であり、学校に属するという存在がまた良い。
 
不思議な転校生、不良たちと対峙する沙世子、全生徒を巻き込んだ劇、燃える校舎と胸が踊る描写がいっぱいあって満足でした。ライターを持つ美香子、秋と沙世子が睨み合う4章が一番好きですね。むしろ嫌いなところあった?というくらい。番外編もあるそうなので探してみようと思います。
 
あと毎回一応リンク貼ってるんですがこれっていいんだろうか。amazonのリンクを貼った方がいいのだろうか。